10.25.2012

バイリンガリズム11〜どこまで目指すか〜

どこまで目指すか、バイリンガル。

実はバイリンガル肯定論とバイリンガル否定論があるようです。わたしは実はどちらの言い分も理解できる気がします。もちろん誰もがバイリンガルに育つことに成功するという保証があればよいのですが、double limited bilingualismという言葉があるように、2言語とも年齢相応のレベルに達していない場合、子供の知的発達にはマイナスの影響があると考えているCumminsという言語学者がいます。実は私も様々な友人らの思春期を観察してきてこれは一理あると考えています。

仲良しのベルギー人友人は7カ国語を操ることができ、旅のお供にはもってこいの人材です(笑)。しかしそんな彼でもやはりビジネスレベル以上でしゃべれるのは3つ(オランダ語、英語、フランス語)で、アジア言語は含まれていません。

私個人は、たくさんの言語を習得するよりはコアとなる母国語+英語を100%マスターすることを目標にしてきました。個々の能力の差が大きいと思いますが、私にとって日本語と英語の両言語を、
1.会話力
2.聴解力
3.読解力
4.書字力
5.文化習得力
の5つのパラメーターにおいて完全に習得するのが精一杯でした。どのパラメーターも100%に近いレベルに達していなければ私個人の中ではバイリンガルとは呼べないようが気がしました(高校生のときの私はこのような考えでしたが、基本的には自分の目標値は今も変わっていない)。18歳の自分はすべての項目において日本語では平均よりも劣勢だったので、それをマスターするために日本に住むことにしました。

ここで一つ言っておきたいのが、私個人のバイリンガルパラメーターの中には「発音」は入れていないということです。本当は6つ目の項目として挙げたいのですが、発音がうまくても文法がめちゃくちゃなアメリカ人もいるし、クセのある発音でも感動的なスピーチを聞かせることのできるNelson Mandelaのような人もいるからここは省略。INSEADというビジネススクールで一緒に勉強をした仲間の中には英語を母国語をしない友人が多くいましたが、それでも彼らはまったく劣らない英語をしゃべっていました(特にスラングは身に付きやすいらしい....)。私などは英国系英語をしゃべる友人に囲まれると「あなたの英語はアメリカ英語だけど聞きやすいわぁ」とほめられているようないないような。発音にもいろいろあるのです。発音は第一印象の大きな助け(あるいはマイナスイメージに貢献)になることは確かですが。

(どうしても子供の発音を上手にしてあげたい人は8歳くらいまでの間に目指す発音の先生やテレビの英語をたくさん聞かせておくとよいかも。私の経験では、我々の親世代よりも現在の中学生のほうが英語の発音が上手。それは小さい頃からなんとなく聞いてきたからだと考えています)

(発音についてもう一つ意見を言いますと、単一言語よりも二カ国語の発音がうまいほうが、次の言語を習得するときに発音面においては有利だと思います。言語学者さんのほうが詳しいはずですが(笑)、まったく別の2言語を操れる人のほうが他言語の発音がすんなり入っていくような気がします)

さてみなさんはどこまで目指していますか。私自身フランス語を上記5つのパラメーターにおいてマスターするのをとっくの昔に諦めました(笑)。

次回は親の役割(ハード編)。私の意見。




10.24.2012

バイリンガリズム10〜定義・程度〜

「バイリンガル」の言葉の定義はなかなか難しいと言われています。

さまざまな言語学者が各々の分類を提示しています。私自身、バイリンガル度とは5つのパラメーターで評価できると思っています。
1.会話力
2.聴解力
3.読解力
4.書字力
5.文化習得力

私の友人同僚でバイリンガルの人たちを紹介していきます。

例1:東京のインターナショナルスクールで育った友人(大半がハーフ)
「インター語」という俗語がありますが、インター育ちの友人らは日本語と英語の使い分けはできるものの、仲間同士では好んでミックスしてしゃべります。こちらが聞いていてもこれがまた見事な混合で、「あっぱれ!」と言いたくなります。90%英語10%日本語の会話を想像してください。自分が言いたいことを頭の中で想像、表音速度を瞬時に比較計算し、速く言い終われるほうを即座に選出して日本語で言うか英語で言うかという決断を下します。学校では英語教育を受けているので英語のほうが得意ですが(実際にはビジネスレベルの日本語となると難しくなる。特に読み書き)、面白いことに育った環境が日本なので、日本に住んだほうがしっくりくることが多いようです。

例2:ラテンアメリカ人で、大人になってから中国語を勉強し始めた同僚
この人は中国人女性と結婚して大人になってから必死で中国語を勉強しました。母国語はスペイン語。英語ももちろんビジネスレベルでお上手。そして一番感動するのが中国語をしゃべっているときの流暢なこと!中国語や日本語など漢字を使用する言語を大人になってから習得するのは難しいという私の考えを見事に覆すよい例です。彼はしかし読解の場になるとやはり中国語を母国語とするスタッフに任せておくほうが安心なようです。

例3:私同様にサンディエゴで育ったけど現地で生まれて現在ほとんどアメリカンな日本人友人
1歳からの友人で、ほとんど姉妹のように一緒に育ってきた彼女と私です。現在彼女は友人との会話や職場でのやりとりなど日常会話はだいたい英語ですが、親としゃべるときは日常レベルの日本語。彼女の場合は小さい頃から兄弟とは英語でしゃべるようになっていました。しかし日本語の文学は頑張って原著で読むこともあり、私から見れば数年間日本で生活をしたら今からでも日本語力がぐっと上がると思われるレベルにあります。

このようにいろいろなバイリンガルがいる中、自分はどこを目指すべきなのか?

次回に続く。






10.22.2012

バイリンガリズム9~体験入学の意義~

10月に入ってからすっかりご無沙汰しております。勢いに任せてMacbook Airを購入したものの、なかなか慣れない日々が続いています。ファンが多いのできっと使い方をマスターしたらとても使い勝手がよいのだとは思いますが、私のようにもともとパソコンが苦手な人間にとっては、むしろマスターするまでの数ヶ月間の時間がもったいない。上下にスクールできるようになるまで1週間かかりました。

シリーズ「バイリンガリズム」もすっかりご無沙汰しております。今回は体験入学について。

さて10月は毎年我が家の子供たちは学校が2週間休みになるため、現在子供たちは二人で日本に一時帰国しています。そして2週間の間、地元の小学校に体験入学をすることになっています。

この体験入学。親が思っているよりもずっと子供にとっては貴重な体験になっています(経験者語る)。私が初めて体験入学した小学校2年生当時のこと。

  1. 語学習得 体験入学初日から自分の日本語能力の限界を感じたのを覚えています。まず日本の子供たちは字が上手なこと!やはり毎日ひらがな・カタカナ・漢字を書いている子供たちは書き慣れていて、上手に素早く作文ができていました。次に音読能力に格段の差がありました。背筋をピンと伸ばして立位姿勢でまっすぐ腕を前に出して教科書を読む姿を目の当たりにしました。更に私の場合、いきなり和歌山弁の世界に放り込まれたので(関西弁の)会話力も習得する必要がありました。
  2. 文化習得(裸の付き合い編)夏季期間だったので体育の時間はプールで泳ぎました。このために水着に着替えるわけですが、男女関係なく教室で一緒に着替えました。私はお友達と一緒に着替えるのはなんとなく違和感がありました(今も好きではない)。アメリカの公立小学校ではプールの授業などなかったし、そもそも体育のために体育着に着替えるという概念もなかったので、学校で洋服を脱ぐことがありませんでした。日本の人たちはよくお友達と温泉に行きますが、私はお友達と温泉に行くのはいまだに苦手です。
  3. 食文化習得 アメリカの公立学校の給食はまずく、毎日同じようなメニューを食べさせられるのに、日本の小学校ではカレーとかシチューとかお味噌汁とか美味しいものを食べられたので私は給食が楽しくなったのを覚えています。食事の後は全員で音楽に会わせて歯磨きをしました。
  4. 文化習得(全校集会編)日本の学校は外に全生徒で並ぶ朝礼や、週に一度の全校集会があり、全員で何かする機会が多くありました。朝礼の後は音楽が流れてクラスごとにゲームや運動をしました。アメリカの小学校で全校生徒で集まるのは防災訓練のときくらいだったでしょうか。そういえば日本の学校では全校集会の度に校歌を歌いました(今でも歌える)。
  5. 一定した教育指針 日本の公立小学校は文部科学省の教育指針に従って授業が進められる上に、教科書も指定された教科書しか使用しません。しかし自由の国アメリカは違います。アメリカにも「一応」指針はあるのでしょうが、強制されないでしょうか、私の小学5年生のときの「音楽」の授業では「自分の好きな音楽を学校に持参してそれに合わせて踊る」というものがありました。参加自由。友人がBanglesのWalk Like an Egyptianに合わせて首を左右に振って踊っていたのを覚えています。私はバカらしくて参加しませんでした。いったいどうやって成績をつけるのだ。
とまあ、このように様々な知覚を刺激される日本での体験入学を合計4回経験しました。今となってはよい思い出です。この経験がなければ大学時代の日本での生活はもっと大変だったと思います。

さて我が子たち。残り5日でシンガポールに戻ってくるわけですが、いったいどんなことを学んで帰ってくるのでしょうか。