12.10.2014

ADHD的な子供をもって(その7)

さて「マイジム的セラピー」効果のほどは。

親が彼の扱いを学ぶとともに、彼も自分の感情を抑える術を学び始めました。深呼吸やイメージトレーニングは本人自らできること。ほめ殺し、たまにはしかるは親ができること。患者本人は徐々に「自分はこういうときにこういう気持ちになる」ということを上手に表現できるようになり、次は、それではそういう気持ちになったとき(だいたいは怒り)、どのような手段でその気持ちをしずめたらよいのか。怒りのスケールを1〜10とし、「今は7/10くらい怒っている」とか「怒りが7以上だから、一人になろう」「怒りは3/10だから、深呼吸で落ち着ける」などという、まるで糖尿病のスライディングスケールのようなツールを学びました。

実はこのスライディングスケールがこのセラピーの中で一番効果的だったかもしれません。

あと、せっかちな彼がじっくりと取り組めるように、「スピード」のスケールを1から4とし(1が一番遅い)、いろいろな「スピード」で同じ行動をとらせてみます。本人は普段楽しいものに対しては「4.5」くらいのスピードで行動しますから、スピード1で行動させるのは一苦労。でも徐々にできるようになってきて、スピードを自己調整できるようになります。これは家でも応用。遅いときなどは「スピード3くらいでお願い」と言ってせかしたりもできるわけです。

すべてはマイジム的な遊びをしながら、です。医療のどの分野も掘り下げると奥が深い!子供にこのような手段を教え込むのに遊びを交えながら効果的に習得させられるのだと私も勉強になりました。

わいみんのもとへ通い始めてから私も学校から呼び出されることが減りました。
以前は「お宅のご長男について少しお話があります…..」的なメールが頻回に届いていた!
続く。

12.09.2014

ADHD的な子供をもって(その6)

遊びのようなセラピーですが、本当に効果的なのでしょうか。

セラピーは2−4週間に一度、一時間。「マイジム」に来た気分の長男は楽しそうにわいみんと一緒に一時間を過ごします。わいみんもプロ。説明をろくに聞かずに遊び始めようとする彼を呼び止め、しっかりと説明を理解させた上でいろいろな「遊び」を展開します。いろいろな制約やルールを設けた中で目的を達成するようなゲームを毎回4個くらいやって終了。最後に親の私にアドバイスしてくれます。宿題をする前に気持ちを落ち着かせるための運動を教わったり、何かを上手にできたらすぐに口頭で褒めるのはもちろんのこと、シールやスタンプを集める方式を加えると本人もそれを目視することができるので効果的だとか。

一度セラピストの都合で長男の「期待とは違う」セラピーを受けました。本人はもう何度か通っていたから、だいたいの流れをつかんでいたのでしょう。今回も前回同様の流れを期待して行ったのでしょう。たまたまセラピストが以前とは違うセラピーを紹介したため、患者本人が期待していたセッションとは違う流れになってしまったまま時間切れとなってしまいました。「期待とは違う」内容に立ち直れず、その後彼は病院内で立ち往生、大騒ぎ。
期待していた ことができなかった彼はこの後一時間くらい病院を離れようとしませんでした。
放っておいたらそのまま数時間となるところだったので、私は次男を家に待たせていたこともあり、
このあと大声をあげている彼を無理矢理タクシーに押し込み、帰宅しました。
このとき本人は今までの公共の場の大騒ぎの比ではない大騒ぎをしました。
周囲のシンガポール人の人たちはきっとクレージーな日本人親子がいるわ、と思ったに違いありません。
なんと、帰宅してから彼の靴がないことに気付きました。
何度か通ってもまだセラピーの効果が出ていないようでした。

続く。

12.08.2014

ADHD的な子供をもって(その5)

状況が絶不調のとき。学校でも授業妨害、遠足は途中棄権、タクシーやお店でも平気で一時間程度は大騒ぎ、週末は半日で物を壊し家を荒らし。

副作用はかわいそうだけど、あまりにも大変で、薬にすがりたい親。

そんなとき患者本人が一言ぽろり。

「薬は性格が変わりそうだから怖い」と言いました。

なかなかよく分かっているではないか。しかし患者本人が内服は嫌だと言っているので、これは他の方法を考えるしかありません。

そしてあまりにもボーダーラインなので、先生側も処方をするかどうか迷っていたようで、家族側が内服に同意しないと伝えるとほっとしていました。

そこで提案されたのは小児発達障害を専門に扱っている作業療法士さんのもとでのセラピー。これなら内服不要。通院はしなければならないけど、内服するよりは「もとの問題」を解決してくれそうだ。内服を嫌う日本人、侵襲の大きな治療法よりは「リハビリ」を好む日本人にはぴったりの治療方法。

早速スタート。セラピストさんは経験豊富な男性セラピスト。名前は「わいみん」。患者本人も「わいみんわいみん」と言って楽しみにセラピーに通い始めました。

セラピーに通うのは一見「マイジムか?!」と思うような遊具が揃っている大きな作業療法室。小児患者さんにもいろいろなサイズがあるので、その子に合わせてアクティビティを調整できるように工夫されています。
セラピストの「わいみん」とうちの患者さん
こんな遊びのようなセラピー、本当に効果はあるのでしょうか。

続く。

12.07.2014

ADHD的な子供をもって(その4)

小学校を退学にはならなかったけど、毎週のように気に入らないことがあると大騒ぎしてスーパーやモールに寝そべる彼はいったい「治る」のか。

私は興味半分、何かにすがりたい気持ち半分で、このような症状を呈する発達障害の子供たちを多く扱う専門家何人かを訪れました。

それで全員が診断を下すのに苦労しているのを見て、私はうすうすと「ボーダーラインなのだろう。彼はどれにも当てはまらない。結局これは<ADHD+性格+しつけの問題>なのだろうと感じ始めました。

他人に危害は加えないけど、大騒ぎ中にたくさんの物に当たり、被害総額は数十万円(絵を切り刻んだり)。自分一人ではこの彼の「病気のような性格のような」ものは治せないと判断し、そのまま「治療」を受けることにしました。

さて気になる「治療」とは。そのときはシンガポールに住んでいました。

実はシンガポール、わりと合理的。ADHD用の内服薬Ritalinがわりと簡単に処方されたりします。驚くのはその理由。シンガポールでは小学生の頃から進級するため厳しいテストが毎年あり、驚くのは、自分の子供がテストを受けるときに特別に試験時間を延長してもらえるようにADHDと診断してもらい、薬を飲ませる親がいるとか。

しかし私に言わせると、テストで特別扱いされるために飲むような簡単な薬ではありません。やはり「脳」に作用する薬なので、通常の解熱剤などではあり得ないようなめずらしい副作用もあります。私が一番いやだったのは「食欲低下」。成長期の子供が薬の副作用で食欲が低下し、やせて行くということを聞きました。

内服を開始するかどうか悩んでいるときに、患者本人が一言ぽろり。

続く。